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ビンテージアウトボードを再現したソフトウェア
新世代のUADプラグインの実力を検証!
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【第2回:ニーヴ1073/パルテックEQP-1A】

ユニバーサル・オーディオの「Apollo」シリーズや「UAD-2」で使うことができるUADプラグインの、最新バージョンを紹介するこのコーナー。今回は「1073」と「EQP-1A」という、EQの名器を再現したプラグインの、旧バージョン(レガシー)と新バージョンの比較検証を行ないます。サウンドや操作性がどのように進化したのかを、詳しくチェックしていきましょう。

文:門垣良則(MORG)


Neve 1073 Preamp & EQ プラグインコレクション

DAW上に完璧に再現された
伝説のニーヴ製モジュール

 実機の1073は、英国ニーヴ社のコンソールに搭載されていたマイクプリ/EQのモジュールで、1970年代に製造されました。当時のモデルはハンドメイドだったために生産台数が少なく、その人気が高まるにつれて価格が高騰し、ワンペア(ステレオ)で購入すると100万円以上もするという、まさにビンテージ機器の王様です。現在も入手は困難を極めます。類似した製品として、同社の1066や1079、またニーヴ公認で製造販売を行なっていたシェップ社の製品などもありますが、いずれも近年は入手が困難です。様々な新製品や新しい技術が生まれているにも関わらず、なぜ1073はこれほどまでに人気なのでしょうか?

 その秘密は一度使うとわかる「ニーヴの音」にあります。ニーヴのモジュールは、インプットとアウトプットにトランスを搭載していて、これが音のキャラを決定付けており、またゲインを上げた時に多少歪んでもピーキー(耳に痛い音)にならずに音楽的にまとまります。ドラム、ベース、ギター、ボーカルなど、どのパートにも使われており、特にロックでの骨太でヌケのいいサウンドは最高ですね。ニーヴの素晴らしさは映画『SOUND CITY』でも描かれています。

 そんな1073を再現したUAD-2の新旧プラグインを、今回はベース、アコギ、スネアの素材で比較検証してみました。新バージョンには新たにアウトプットフェーダーが付いたので、「ゲインで音の質感を決めてアウトプットで絞る」という1073の本来の使い方ができるようになりました。これは本当に素晴らしい変更点で、レガシーでは「ゲインを上げるだけで音が抜群に太くパワフルになる」という感覚があまり感じられなかったので、新バージョンの出来の良さに驚きました。

 ちなみに、レガシーではマイクプリよりもEQにフォーカスして作られている印象で、ゲイン調整や倍音を付加するという点では印象が実機と異なりました。しかし、これはこれで明るいサウンドなので、EQとしては良く出来ていると再認識しました。

 さて、新バージョンの方のEQはデフォルトではオフになっており、このあたりからもゲインによる音作りを意識していることがうかがえます。まずEQの一番上のツマミを上げると、実機のニーヴで感じられる「ヌケが良くてピークがないハイエンド」がググッと出てきました。そして、アコギでは「12kHz、3.2kHz、220Hz」をブーストすると、ツマミをわずかに動かすだけでも非常にかかり方が良く、イメージ通りのニーヴの音になりました。また、ベースでは「12kHz、1.6kHz、110Hz」をブーストすると、非常にリッチなローやミッドを得ることができ、スネアでは「12kHz、1.6kHz、220Hz」を少し大げさに上げると、極上のヌケの良さとふくよかさが得られました。

 新しい1073プラグインは操作性と使い方が実機通りで、筆者が使い込んでいるオールドニーヴと同様の音作りが可能でした。筆者は今まで本物のビンテージニーヴを愛用しながら、ニーヴを模した実機やプラグインをほぼすべて試してきましたが、UAD-2の新しい1073は、そのサウンドにおいて「最も本物の音に近い」と感じました。


New version

▲新しいNeve 1073プラグインには、アウトプットフェーダーとアウトプットアンプが追加された。また、モジュールが縦型の配置になり、実機同様にゲインは5dBステップで調整できるようになっている。さらに、ライン用のゲインが実機同様に反時計回りで上がるという徹底した作りだ


Legacy version

▲レガシーはゲインが無段階だった。また、アウトプットレベルが調節できないので、マイクプリというよりEQのモデリングという印象だ


Hardware

▲1073はコンソールのインプットモジュールとして作られた。トランス式の入出力やクラスAディスクリート回路などを搭載している


新旧UADプラグイン&実機を聞き比べ!



Pultec Passive EQ プラグインコレクション

独自のコントロールによりサウンドに
“真空管マジック”をかけるEQ

 パルテックの真空管回路によるEQは1950年代に設計され、特に有名なのが「EQP-1A」です。本機は真空管らしい艶やエアー感、ローのふくよかさを演出できることと、独特の操作性により、今も世界中で愛されており、主にボーカル、ベース、キック、スネア、アコギなどで使われます。また、様々なメーカーからパルテックタイプのEQとして復刻版が発売されており、真空管式機材で有名なチューブ・テック社も、EQP-1Aの復刻を手掛けるところから始まりました。

 UAD-2の新しいパルテックEQは、レガシーに比べて倍音の豊かさが大幅に変わり、ようやくパルテックの「マジック」が感じられるようになりました。新旧プラグインの比較にはベース、アコギ、キックの素材を使い、各楽器のレンジを広げて存在感を出すという方向で音作りをしてみました。

 まず始めに、ベースのサブローとアタックをEQP-1Aで作ってみると、新バージョンの方がレンジが広く感じられました。操作方法はまず30Hzをブーストし、少しローが多いと感じたらATTENでカットします。この独特の操作がEQP-1Aの低域のコントロール方法であり、人気の理由のひとつです。レガシーも良かったのですが、レンジが新バージョンよりもわずかに狭い印象でした。

 アコギは100Hzをブーストし、その後にATTENでカットしました。そうすると、ブーストとATTENではブーストが優先されるため、シェルビングカーブで持ち上がった100Hzに対して、ATTENで100Hz近辺にくぼみを作ることができます。さらに、高域の倍音を伸ばすために8kHzをブーストすると、EQP-1Aらしい高域が広がる素晴らしいエアー感が得られ、フルレンジのアコギの音像になりました。一方、レガシーではエアー感が少し物足りませんでした。


New version

▲インターフェイスが大きくなり、ノブが見やすくなったことで手軽にブースト/カットが行なえ、カラーがビンテージ風になったのも創作意欲を高めてくれる。EQP-1Aの他に、ハイ&ローパスフィルターの「HLF-3C」とミッドレンジをEQできる「MEQ-5」が含まれているが、EQP-1Aを使いこなせればこれらも直感で操作を理解できる


Legacy version

▲レガシーバージョンは新バージョンと比べると、倍音が少なく感じられた。これも良いEQなのだが、特に100Hzと8kHzは違いが顕著だ


Hardware

▲こちらが実機だが、EQP-1Aタイプの実機はビンテージ以外にも多数存在し、現在も様々なメーカーから発売されている。中にはソリッドステートタイプのものもある


 続いてキックは、フロントヘッドの穴の外に立てたノイマンU47fetで収録し、その素材で比較しました。60HzをブーストしてATTENでカットし、8kHzをブーストしてエアー感を出すと、実機と遜色ないレンジ感のあるワイドな音像が作れました。一方、レガシーでは少しタイトでした。

 ちなみに、EQP-1Aのハイのレンジは、ATTENでしか調整できません。例えばエレキギターとオルガン、エレピなどの楽器が同時に鳴っているセクションで、いずれかの音を奥に配置したい場合には、ATTENで20Hzや10Hzをカットすると、面白いように音像を前後させることができます。これはモノラルでレコーディングした時代にきっと重宝されたのではないかと思います。


Apolloシリーズを使えば「1176」と「LA-2A」のかけ録りができる!

apollo twin

▲Apollo Twin
(SOLO=¥75,000、DUO=¥95,000)

  今回紹介した「1073 」と「EQP-1A」のプラグインは、ミックスダウンに使えるのはもちろん、同社のオーディオインターフェイス「Apollo」シリーズを使うことで、レコーディング時の音作りにも活用できます。今回の試奏では試せていませんが、録り音に1073やEQP-1Aをかけつつ、その設定をオーディオインターフェイスから操作できるユニゾンテクノロジーは、まさに革命だと思います。Apolloシリーズは最高24ビット/ 192kHzの高音質録音が可能で、デスクトップに最適なアナログ2イン/6アウトの「Apollo Twin」と、8イン/12アウトの「Apollo」、アナログ16イン/16アウトの「Apollo 16」の3機種があります。

※価格はオープンプライスの市場予想価格です。


apollo

▲Apollo(DUO=¥196,000/QUAD=¥250,000)

apollo 16

▲Apollo 16(¥280,000)



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